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食べもの記

人たらしということ

 

 只今洗車の順番待ちである。天気がいいので私の前後に2〜3台はいる。

 シャンプーが400円、車体下部洗いが200円であった。下部は雪道に滑り止めの塩分が撒かれているため、そのまま春を越すと錆びる。一度は下部も洗わなければならない。あ、拭き上げタオルを忘れた。まあ、白い泥が落ちれば今日はいいや。

 上だけでも家で手洗いすれば良かったな。でも、今14:58、15:00の顧客1件あり。時間もないし、そこまで私がやっていたら寝る時間がなくなる。後会社2件車で、バイクで1件ずつ。買い物と銀行振込をはさんで夜の部4件、滞りなく終われば今月は終了。

 すでに先程この7件を立替えて、事務員さんに納付してきた。終わったら、先月転倒してケガをしていた同僚の女性にお見舞いがてら顔を見に行く。そんなこんなで、夕飯の時間になるだろう。

 銀行ATM月末で混んでいる。合間に打っている。

 

 それから買い物、納豆や牛乳などの必需品一週間分。それだけ買おうと思うが、やはり眼光鋭く、お得商品を探しちゃう。いかん、今日は早くしないと。

 子供の小さい時は、スケジュール通りなんて行くわけがなかったから、いまだに時間に対して呑気に構えてしまうのだが、今ややればできるのだ、自分さえしっかりすれば。

 時間指定の顧客を利用して、スパンスパン空き時間にも雑用を入れる。そして早すぎず遅れることなく、バイクを借りに営業所に到着、残り4件をまわる。いつも遅くでないとつかまらない奥さんは、残念ながら今日も留守中であった。車で行くには細くて大変な路地裏の家、しょうがない。また来よう。

 

 昨日の夕方5時くらいにまわった家庭的な旅館。

 90歳の女将が引退され、67歳の娘さんが、料理を一人で切り盛りしているそうだ。

 この新女将さんは、いつの頃からだったか、親しく話して下さるようになった。

 先週末は、地元の国立大学の受験のために、この辺りのビジネスホテルが満杯だったということだ。それにあぶれたスキー客などが、この家庭的旅館にも流れてきて、23人ほどの食事を一人で作って大変だったそうである。

 新女将さんは近くの地元スーパーで安いものを目利きして、それでメニューを決めるということだった。山形の芋煮などをふるまったら、「美味しい、美味しい」と大変喜ばれたそうである。あまり、ホテルや飲食店でも、芋煮を出す所は少ないらしい。

 そして、毎日何十年も料理をしてきて、腕は相当なのだろうと思う。

 朝は4時半から10時過ぎまで、夜は夕方から10時過ぎまで、動きっぱなしよ、と輝く笑顔で話される。

 90歳の先の女将さんも、いろんな話をしてくれたけれども、新女将さんも、化粧っ気がないのに、透明感のあるつやつやな肌で、美しい笑顔で、これからの見込みのある仕事などを勧めてくれたり、残りの人生について、話して下さったりする。

 コロナ禍で、一時はお客様も来なくなったけれども、どのようにして、切り抜けていったか、その努力と知恵には感嘆すべきものがあった。

 私はほとんどはぁはぁほうほうと、見とれながら聞くばかりなのだが、この新女将さんも、近所のやはり働く女性やお友達を見ては、自分もやるぞ!と励まされるのだという。

 「人たらし」とは、あまりいい意味では使われないのかもしれないが、勝手にほめ言葉として、こういった魅力的な、輝く人を私は心の中でそう呼んでいる。そして、私もいつか、こんな人になりたいと思う。

 

 1件のために、着替えて時間外に集金しなければいけないこともあるし、雪の時、車でいけない(駐車スペースがない)家もあるし、単価は安いし、わりに合わないと思うこともあるが、人とのやりとりで得るものは、自分次第で無限大である。

 …とは言いすぎかもしれないけど、それに近いものはあるだろう。